2001年09月

2001年09月21日

2000年7月24日「愛知万博検討委員会」の市民合意    

「海上の森」での「愛知万博」反対運動が、盛り上がりをみせたその方向性に一応の終止符を打ったのが、昨年の7月24日「愛知万博検討委員会」での市民合意ができた、との結論であると思われる。「海上の森」での大幅な縮小と万博推進の判断である。少なくとも世間はそう受け止めた。当然決まったお題目に誰も関心を寄せないのが世間の常識である。必然的にマスコミも食わなくなった。

そして、市民は淡々とこの現実を受け入れた。その結果の最大の現れがこの春の名古屋市長選である。また、この現実はニュアンスを変えて全国的には、市民団体と環境保護3団体のお陰をもって「海上の森」が守られた。市民運動の勝利とまで囁かれるに至った。また、市民参加による「愛知万博検討委員会」の審議システムそのものもマスコミで大きく取り上げられ評価された。結果的には市民グループの参加が返って拙速的な結論を導かせたとも言えなくもないが。

しかし、各市民グループの運動はこれで終わった訳ではなかった。当初の万博計画があまりの大破壊を伴う事業に対しての拒否反応が運動の原初であった。時代の推移が深刻な財政問題をもたらし、全国で「公共事業の見直し」が叫ばれる昨今、万博事業の持つ社会的意義への評価倒れが余儀なくされてきたというのが今日的状況であると思われる。

昨年8月6日、愛知万博NGO集会「どうなった 愛知万博検討会議」が開かれる。この集会でマスコミが報道した「県民合意」に至る検討会議での模様が徹底的に検証される。この日の参加者60名から、「万博検討委員会」のあり方に対して厳しい批判が交わされる。その結果、代表検討委員6名のうち4名が〈合意せず〉の見解を表明する。この集会において「県民の合意が出来ていない」ことが公に確認できた特筆すべき集会となる。この時の決議案は2週間後に記者会見をもって、「愛知万博検討委員会」に参加した市民団体は〈万博に合意していない〉ことを表明すると言うものであった。

この時点から、「万博検討会議」に頼らない、新しい反対運動が模索され始めるが、万博NGOのパワーが集結するにはまだまだ時間を要した。しかし、9月29日の愛知万博NGO集会において万博反対を打ち出すグループを含む「実行委員会」が結成される。目標は「この2ヶ月間に集中した取り組みをしよう」というものであった。運動体の名称は「万博 ちょっとまて実行委員会」に決まった。

反対が言えなかった万博運動のジレンマ
 
「海上の森を守る会」の運動は非常に激しい運動を今日まで展開、「土地トラストの会」、ボーリング訴訟、アセス訴訟、住民監査請求と、万博協会に真っ向から対抗する運動を推進してきている。しかし、反対を「海上の森」から市民に発信することを躊躇っている経過が感じられなくもない運動の展開だったように思われる。他のどのグループよりも会員数において大所帯であるところから来る、万博に対する各自の温度差の違いがそうさせているのだろう。しかし、それだけではない理由もある。

この理由が万博を考える運動の困難さを象徴しているものかも知れない。例えば、主会場になった長久手町地元が反対の運動に出ない地域特殊性の問題等がそれに当たる。「海上の森」、長久手町、これは地元住民運動である。そして、愛知県・名古屋市の運動を市民運動という構図で捉えるとします。地元が反対の名乗りを上げない運動は極めて理念的な運動に陥りやすいのが常であるが、こと、「愛知万博」の運動に関しては、単純に2元論的に論じる訳にはいかない。

問題の核心は、万博は国の祭り事、愛知県の悲願であって「愛知万博」の問題点をいかなる犠牲を払っても解決して執り行わなければならない催し事で、そこに人々の英知が結集される、自然との調和が実現されるという崇高なモラルを強要されている市民がいるということに尽きる。暗示に罹った市民がいるのではなく、それを暗に求めた市民がいる結果である。だから、反対の声が前面に出ない運動が展開され、「万博検討委員会」においては問題の解決なき合意ができてしまう結果となったとも考えられる。

しかし、昨今の深刻化した、国、地方自冶体の財政問題、民間企業の業績落ち込みは、希望的観測では払拭できないある種の不安を市民に抱かせるに至っている。そして、この現状を誰しも否定できない状況と認識せざるを得ないのが正直なところであろう。事実、今年の春以降、万博と真正面から対峙する反対の声が各グループで起こってきた。万博の問題が熟成されてきたのである。

9月2日、「海上の森を守る会」の総会が開かれた。今後の課題として、「万博反対の活動について」が決議され、白熱した議論が交わされた。また、隣の主会場になっている長久手の2団体の方々との意見交換も行った。共通した最大の問題点は自然破壊が著しいということであった。縮小された筈の「海上の森」での計画利用地が一番の自然保護の対象とすべき希少種の宝庫である。また、青少年公園の拡張は、希少種の生態系を全く無視した計画であるにも拘らず、青少年公園地区での環境アセスメントが実施されていない。この現実が行政の迷走する暴挙そのものであり、私達を驚愕させる。中央環境3団体は何を血迷っているのか、その意図を測り知ることはできない。

各グループの反対を訴える共通した課題

◎現行計画への環境アセスメントの実施を求める
◎万博事業の赤字責任の明白化
◎市民合意なき万博強行、関連工事に反対する

最後に反対運動の展望について

公共事業見直し運動の政治的決戦で類似した経過を辿っている建設反対運動に「神戸空港」問題がある。類似したと記したのは、住民投票条例請求が否決され、且つ市長選で敗北という政治対決を共に経験しているからである。

ご承知のように、工事は2年まえに着工され外周護岸の7割ができ年内の埋め立て工事に着手する見通しになっている。しかし、反対運動がまたもや盛り上がりを見せている。10月の神戸市長選である。建設反対市民グループは、「最後の建設中止のチャンス」と位置づけ全力を挙げて取り組むことを抗議アピールしている。

たとえ工事が着工されても問題の取り組みを弛めることなく反対運動を根気良く続けることが、展望を切り開いていくと信じての運動と思われる。また、市民運動は何時からではなく、いつも今からが運動であるという原点を忘れることなく立ち上がることが、地域における住民運動であることを教えられる。その意味で、今回の「海上の森を守る会」が新たな反対運動を繰り広げることは非常に意義がある。

21世紀冒頭、愛知県の市民・住民運動が、「愛知万博」、「中部国際新空港」、「設楽ダム」と3大公共事業のひとつも止めることができなかったとしたら、次世代に継承すべき何の理念も持たないことを市民が証明したことになるだろう。また、愛知行政は、今日の最大課題である環境配慮、公共事業見直しを全く考慮しなかった廉で後世に語り継がれる汚点を残すだろう。

市民である皆さん、ここは正念場である。

岩畑 正行(Wind TWA)
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