「在日米軍再編」に伴う在沖海兵隊8000人のグアム移転説

先ず、「在日米軍再編」の話題性の背景を簡単に述べます。2004年9月21日、ブッシュ・小泉会談において大旨了承されたといわれています。10月に入って、小泉首相、細田官房長官の正式な発表、「在沖海兵隊の本土分散の受け入れ」、「国外移転についても米側と折衝中」が報じられました。さらに、首相のベトナム・ハノイでの記者会見において「在沖海兵隊の移転先は国内と国外の両方ある。国外移転があってもよいと思う」と語ったことから、一気に国外移転説が一人歩きする状況を呈することになります。ここに沖縄の基地負担軽減説、虚構が始まる訳です。

 基地負担軽減虚構説を語る前に、基本的に私達が理解しておかなければならないと思うことがあります。冒頭にある「在沖海兵隊の本土分散の受け入れ」が今回の再編の米軍にとっての最大の目的であるということです。さらに、本土分散することにおいて、太平洋海兵隊司令官は「一緒に訓練し、一緒に出兵し、生活を共にすることが可能になる。米軍がテナントとして駐屯する基地を増やすべきである。」と発言しています。そして、テナントの総本部(ワシントン第一軍団司令部)をキャンプ座間に置くというものです。
 
そこで、日本におけるテナントと総本部の関係において、再編問題を論じる場合、基本的に押さえておかなければならない認識は、米軍は米軍世界再編であり、日本の場合は、在日米軍再編になることです。そして、あまり知られていない事実があります。「在日米軍再編」が進む背景と同時進行的に、日本政府は、防衛庁長官を議長とする「防衛力の在り方検討会議」で具体案の策定を急いでいたというものです。それが、10年ぶりの新「防衛大綱」です。当然、「在日米軍再編」の整合性を念頭においたものです。そして、新「防衛大綱」の実現に向けて、日本政府防衛関係者が積極的に「在日米軍再編」を促したとも言われている現実があることです。ここに基本的な日本の身勝手な解釈が先行する原因があります。

米軍世界再編におけるテナントの意味は、具体的には、世界中における基地ネットワークの確立を意味しています。そして、その一環に話題のグアム基地があります。ご承知のように既に米空軍基地があり、今回の世界戦略米軍再編の根拠になっている、「不安定な弧」を睨んだ最大利点基地として米軍が計画している基地です。現在、米軍の戦略目標は、あらゆる不測の事態(不確実性)に対処し得る緊急軍事展開(移動)が如何に可能かに焦点が絞られています。

その結論が、「蓮の葉」戦略といわれる「カエル飛び軍隊(移動できる軍隊)」を可能にする、世界各地での目的に合わせた軍事基地の構築にある訳で、これが世界再編の米軍の狙いです。そして、それを可能にする最大利点立地基地がグアム、365日24時間営業が可能(民間対策不要)な基地計画がある訳です。さらにグアムへの自衛隊の乗り入れによる、統合運用を望んでいる。

 従って、「在沖海兵隊」のグアム移転説は、政府広報とマスコミに因る沖縄の基地負担軽減という、国民が喜び、関心の引く作り話に替えられているということです。未だに在沖海兵隊8000人が全員グアムへ移転するかの報道を続けるマスコミの功罪は計り知れないものがあります。根拠に乏しい、国民の知らぬ間にお献立てが進んだ現実を隠蔽するマスコミの作り話に過ぎないということが言えます。
正に基地負担軽減虚構説なのです。それを証明したその第一歩が岩国への空母艦載機の移転だった訳です。
 
「在沖海兵隊8000人」説の根拠はどこから出たのかという素朴な疑問があります。公称、在沖海兵隊は1万8000人だといわれています。そして、既にその一部をキャンプ富士やキャンプ座間へ、さらに矢臼別演習場へ約3000人を分散させることになっています。(既にキャンプ富士では、訓練に伴う整備、恒久的宿舎の建設が一部完了しているとあります。)また、今回の問題を紛らわしくさせたマスコミの誤報的配信記事となった、沖縄県キャンプシュワブ駐屯の海兵歩兵連隊約3000人の移動があります。実はこの移動はイラクへの派兵部隊であって、その後世界再編の計画の下に本土へ帰還されています。

これは政府答弁によるグアムへの3千500人の要員移転に匹敵するものです。この事実は大事なところです。この事実を踏まえ、現実に単純計算すると今後も1万1000人の海兵隊員が在沖していることになります。但し、マスコミ等の表現を読めば、「在沖海兵隊のうち8000人をグアムへ移駐する」としか書かれていません。
 
ここで問題は、米軍世界再編の狙い、日本の場合の「在日米軍再編」は、在沖海兵隊の日本本土への移転を主張しているということで、グアムへの移転という認識は持っていないということです。その根拠は、米軍は米国領グアム基地に展開(移動)することが既定方針になっていたという事実(3千500人が帰還している)が物語っています。さらに《日米同盟:未来のための変革と再編》には、「太平洋地域における米海兵隊の能力再編に関連し、第三海兵機動展開部隊司令部はグアム及び他の場所に移転され、・・・縮小される。この沖縄における再編は、約7000名の海兵隊将校及び兵員、並びにその家族の沖縄外への移転を含む。」と明記されています。飽く迄も、米軍再編の移動(展開)であり、「グアム及び他の場所」と謳っているように、沖縄における基地負担軽減を図るために8000人をグアムへ移転するのではないということです。

それを、政府、マスコミは国民感情に訴えるが如く、沖縄の軽減に繋がる「在日米軍再編」は受け入れざるを得ないとキャンペーンを張った訳です。あたかも、グアムへの移転は日本からの要求と勝手な解釈をして国民に説明したに過ぎません。従って、現在一人歩きしている8000人をグアムへ移転させるという作り話は、「本土移転」に伴う国民世論の反発を回避する為の政府、マスコミ共同のキャッチフレーズ、画策といえる訳です。(思い出して頂きたい、33年前の米空母ミッドウェーの横須賀母港化の時も、秘密主義で進められ「母港化ではなくて乗組員家族の移住だ」と言い続けて嘘をついた。)

従って、「在沖海兵隊のうち8000人をグアムへ移駐する、沖縄の基地軽減になる在日米軍再編」とキャッチフレーズ化することで国民の関心と理解を求める政府キャンペーンは、嘘を言っていると反撃しなければなりません。飽く迄も、米軍の戦略的都合で、在沖海兵隊7000人を本土とその他(グアム)へ展開(移動)するというのが事実です。在日米軍再編は、沖縄では辺野古新飛行場建設と在沖海兵隊1万1000人が残る、本土においては、米軍ならびに自衛隊基地との共同運用する為の設備強化です。

そして、言われている費用分担金は、グアムへの移転費が7000億円、そして共同統合、運用費用が約2兆円です。どうして多額の出費が基地負担軽減になるのか、国民にとって負担増大は論を待たないところです。在日米軍再編に伴う予算が、現在の「防衛庁」では賄いきれないから、9日の「防衛省」昇格の閣議決定が行われたのでしょう。基地による抑止力の維持は、現実的にあらゆる意味において負担軽減にはならないことを主張していく必要があります。

最後に
8000人虚構説を打開していく一つのキーワードは、兵力は「数」ではなく「能力」、質的転換が再編の狙いと言えます。それを如実に証明しているのが部隊の名称です、「第三海兵機動展開部隊」になっている、いわゆる機動的な移動部隊ということです。
ということは、何時、在沖海兵隊が1万1000人から1万6000人に、またそれ以下に減ることも考えられる訳です。飽く迄も、米軍の戦略的都合で「数」の論理は成り立つ訳です。従って、私達は「数」の論理に翻弄されることなく、基地の共同運用は負担軽減には一切ならないことを証明していく必要があります。

上記の舌足らずの私の見解は、政府の「沖縄からの海兵隊8000人のグアム移転は、沖縄基地負担軽減になる」という虚構を打開する説得力あるものにほど遠いものかも知れませんが、在日米軍再編を考える場合の何かの示唆するものであってくれることを願っています。

参考資料
日米同盟:未来のための変革と再編(仮訳)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/henkaku_saihen.html
在沖縄海兵隊司令部のグアム「移転」及び「米軍再編」に伴う財政負担に関する質問主意書
提出者  赤嶺政賢
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a164248.htm
質問に対する答弁書
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b164248.htm
再編実施のための日米のロードマップ(仮訳)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/g_aso/ubl_06/2plus2_map.html