09年11月6日、民主党の山岡国対委員長の「永住外国人に地方参政権を付与する法案」提出の発言があり、さらに、小沢幹事長の訪韓での今期国会成立約束発言で一気に話題が沸騰したが、世論の圧倒的な反対意見、地方議会、マスコミ等の反発が読出して、やっと29日鳩山首相の発言(外国人選挙権法案、提出見送りも 首相が表明 1月29日朝日新聞)で収束しての、審議、議論に向かいつつある。

産経新聞は例によってこの問題に熱心である。28日朝刊一面トップで、「地方参政権は違憲」だと駄目押しするかのような記事(外国人参政権をめぐる長尾教授インタビュー詳報「読みが浅かった」)、法的に地方参政権付与を仕掛けた法学者の論説撤回記事を掲載している。

長尾一紘教授は1988年「外国人の人権―選挙権を中心として」の論文で、諸外国の動向に合わせて「部分的許容説」を紹介してきた推進的役割を担った学者として知られている。その長尾教授が記事のインタビューで『「過去の許容説を変更して、現在は禁止説の立場を取っている。変える決心がついたのは昨年末だ」』と答えている。参考に記事の一部を転載しておく。

外国人への地方参政権付与は合憲としてきた長尾一紘(かずひろ)・中央大教授が、従来の考えを改めて「違憲だ」と明言した。主なやりとりは次の通り。
 −−地方参政権を認める参政権の部分的許容説に対する今のスタンスは
 「過去の許容説を変更して、現在は禁止説の立場を取っている。変える決心がついたのは昨年末だ」
 −−部分的許容説を日本に紹介したきっかけは
 「20年くらい前にドイツで購入した許容説の本を読み、純粋に法解釈論として合憲が成立すると思った。ただ、私は解釈上は許容説でも、政策的に導入には反対という立場だった」
 −−許容説から禁止説へと主張を変えたのはいつか
 「民主党が衆院選で大勝した昨年8月から。鳩山内閣になり、外国人地方参政権付与に妙な動きが出てきたのがきっかけだ。鳩山由紀夫首相の提唱する地域主権論と東アジア共同体論はコインの裏表であり、外国人地方参政権とパックだ。これを深刻に受けとめ、文献を読み直し、民主党が提出しようとしている法案は違憲だと考え直した」 
(中略)
 −−学説の紹介が参政権付与に根拠を与えたことは
 「慚愧(ざんき)に堪えない。私の読みが浅かった。10年間でこれほど国際情勢が変わるとは思っていなかった。2月に論文を発表し、許容説が違憲であり、いかに危険なものであるのか論じる」(小島優)

長尾教授はこのインタビューで、法律的解釈に政治的解釈を現代史的に総合判断(『10年間でこれほど国際情勢が変わるとは思っていなかった。』)しての結果だと説明している。さらに、『鳩山由紀夫首相の提唱する地域主権論東アジア共同体論はコインの裏表であり、外国人地方参政権とパックだ。』と指摘している。この指摘は、強ち間違っているとは言えない。

新聞での発表は、インパクトのある宣伝効果が最大限見込まれたイデオロギー戦略である。また、月刊誌等もより詳細な見解で主張が行われる。そして、この問題は保守勢力にとって、断固法案提出阻止しなければならないものとなっている。そこで、産経新聞掲載に併せて月刊誌「WILL」は3月号を発売、百地彰教授の「提唱者までが否定した 外国人参政権」を掲載して、その中で長尾教授の否定説を紹介している。但し、百地彰教授の論評は、09年12月号で「外国人参政権は憲法違反だ」の時とほぼ同じ説明内容のものである。タイミングが良過ぎるところに雑誌「WILL」、花田紀凱氏の戦略がヒシヒシと伝わってくる。また、その戦略性は、法律的かつ政治的解釈を推考する百地彰教授の説得力を際立たせている要因にもなっている。

長尾教授がいみじくも言い得た『10年間でこれほど国際情勢が変わるとは思っていなかった。』というのは、現在は神話の時間軸の部類になり、悲しいことに1週間が私たちの判断基準を大きく左右する時代に突入している。そのニュース、現実の進行が、また私たちを更なる疲弊した社会、政治不信へと誘導しているようである。
(つづく)

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