消費増税論議で始まった選挙

参議院選挙が公示、「政権交代」実現後、初めての国政選挙である。24日、早くも新宿小田急前で熾烈な17日間の戦いの幕が開けられた。

近年、日本社会は、目まぐるしいほどのスピード展開の下で社会がうごめいている。日めくりカレンダーで顔が変わり、政策が変わるというある種異常な政治状況で国民生活は振り回されている。なかでも歴史的といわれた「政権交代」が昨年8月にあり、前鳩山内閣が発足し10カ月、新たな菅政権が誕生、沖縄普天間の「日米合意」だけを受け継ぐ形で新たな政策を掲げて始動、参議院選挙に突入した。

菅首相は就任早々、「強い経済、強い財政、強い社会保障」のスローガンを掲げ、その基盤に消費税増税と企業減税策をぶち上げた。根拠は、自民党も消費税10%引き上げを謳って選挙に臨む姿勢を先取りしての戦術にでた訳だが、国民と野党のリアクションの早さと過激さに閣僚共々、発言を軌道修正せざるを得なくなり、支持率を9ポイントも落とすことになっている

従って、野党陣営からの攻撃は、10兆円消費税増税と大企業減税阻止を参院選の争点にされてしまった。この文言の響きは、国民にしてみればどこから聞いても不快なものでしかない。選挙での増税アレルギーが少しは払拭されてきたという報道もあるが、やはり、この払拭には、国民が体で理解出来るような具体的な施策が実行されなければやはり無理だということだろう。

「第二のギリシャになる」、前自民党時代にも使い古された官僚の常套脅し文句はもう通じない、菅首相が一番知ってそうな文言を自ら言うところに、官僚に取りこまれた二人三脚内閣と見破られる脆さを早くも露呈している。元のイラ菅が韋駄天の菅に変身している。やはり総理の椅子は菅氏をもってしても変えてしまう魔物が潜んでいるのだろう。当初、国土省ポストに駄駄を捏ねていたあの辻元清美氏ですら、就任後は借りてきたお姫さまに変身、連立離脱の辞任式で泣くのだから、閣僚の椅子には人間を変身させる魔の力が、しめしめとほくそ笑んでいるのだろう。

一時的にせよ、民主党にとって選挙出陣状況は、政権誕生の祝儀気分支持率という訳にはいかなくなった。既に身内筋からも猛反発が起きていて、ややもすると選挙に影響を及ぼしかねない雰囲気になっている。特に、「政権交代」の公益を一番に掲げて、その立役者(小沢一郎氏)を民主党の守護神のように奉っている植草一秀氏等は菅首相発言、政策に猛反発している。

何かにつけて、小沢民主党に対する盲信的言論が目立つ植草一秀氏に対しては、筆者も冷静に対処するように呼びかけているが、こと経済、財政ということになると、やはりそこは専門家である。今回は、説得力ある筆者も反論する必要のない的確な主張だ。それは、6月23日のブログ「大資本減税庶民大増税提唱の菅路線は挫折する」というタイトルだ。ズバリ『菅路線は挫折する』と明言している。そこで植草氏のかなり選挙動向に突っ込んだ内容の主張を一部紹介する。

参院選では、民主党内小沢氏グループ候補者を個別に支援する以外、比例区では国民新党、社民党を支援するのが主権者国民の正しい選択であると考えられる。
9月代表選をもって菅政権に終止符を打ち、主権者国民の意思を尊重する民主党代表を選出して、もう一度、主権者国民政権を構築することがどうしても必要である。政府支出の無駄排除なき消費税大増税に突き進む菅民主党に対しては不支持の姿勢で臨むことが求められる。

いきなりの菅内閣民主党に対する先制攻撃だ。つまり、『9月代表選をもって菅政権に終止符を打ち、・・・・もう一度、主権者国民政権を構築することがどうしても必要である。』と説いている。財政立て直しは、景気回復による税収の自然増が望ましいので、消費増税による対策は、反って回復を遅らせ、政府の無駄削減にブレーキをかけることになると警告している。

それを先ず可能にするのが、民主党が野党時代から主張してきた「天下り根絶」を速やかに徹底することだと再々主張している。実はこれが「政権交代」でのいの一番に実施しなければならないことであった。実効性の担保がない「事業仕分け」と蓮舫議員のチャーミングでは何ともならない。そして、実施されなければならなかった、「公務員給与と議員給与の削減」、これもこのご時世では特に大事なことである。これは、「痛みを分ちあう」社会づくりの、国民に対する具体的な説得力ある施策である。

つまり、永田町一丁目の身内から無駄削減に奮闘してから、庶民に対する消費増税案の提示がどう考えても筋道である。どうやら、韋駄天の菅首相は、財政再建による増税が錦の御旗になっていると勘違いしているようだ。また、法人税減税も目玉的に打ち出しているが、植草氏は、2007年11月、政府税制調査会が発表した見解を紹介して、菅首相の主張が誤りであることを証明している。

政府税制調査会が2007年11月に発表した「抜本的税制改革に向けた基本的考え方」の17−18ページに以下の記述がある。
「法人実効税率とは、国・地方合わせた法人課税の表面税率のことである。我が国の法人実効税率は、国際的に見て高い水準にあり、引き下げるべきという議論がある。この問題を検討するに当たり、当調査会は、平成19 年度の税制改正に関する答申を踏まえ、課税ベースも合わせた実質的な企業の税負担、さらに社会保険料を含む企業の負担の国際比較を行った。また、企業減税による企業部門の活性化が雇用や個人の所得環境に及ぼす影響等についての調査・分析を行った。課税ベースや社会保険料負担も考慮した企業負担については、モデル企業をベースとした試算において、我が国の企業負担は現状では国際的に見て必ずしも高い水準にはないという結果も得た。」

さらに、「しんぶん赤旗」は、24日、『法人税 「40%は高い」といいながら実は…』のタイトルで大手企業の法人税率を紹介している。
なんと、ソニーの12.9%を筆頭に、百社平均が33%であると紹介している。そして、極め付けは、『「日本の法人税はみかけほど高くない」と財界の税制担当幹部自身が認めています。』とある。政府官僚、経団連が説明しているのだ。国民をバカにするなと菅首相に怒鳴りつけたい。

そんな訳で、今回の植草氏の主張は至極まっとうで勉強になった。やはり専門家には一理も二理もある。それから推して、『参院選では、民主党内小沢氏グループ候補者を個別に支援する以外、比例区では国民新党、社民党を支援するのが主権者国民の正しい選択であると考えられる。』というのは、満更でもない。因みに、「満更でもない」は、かなり気に入ったという意味である。そこで、自問自答したい、「本当に民主党でよいのか」。